僕が女の子に負けた時
Text by mampepper
柔道部編/PART-3



柔道部編/PART-3
(PART-2から続く)

「やんちゃ坊主は、そろそろお昼寝の時間よね〓」
そういうと、奈美はいきなりまもるの背後に組み付いた。
「ぐ…ぇえっ…」
奈美の腕がするするとまもるの首に巻きつき、襟をつかんで絞め上げる。
完全な送り襟絞めの体勢に入った。
「かはぁっ!」
歯を食いしばったまもるは、必死に奈美の袖をつかみ、なんとか絞めを防ごうとした。
しかし奈美の腕は、ギリギリとまもるの首にくいこんでいく。
「オ・ト・セ! お・と・せ!」
麻理が音頭をとって、女子部員は「落とせ」コールの大合唱。
(く…苦しぃっ…い、息が……)
まもるの視界はゆらゆら揺れて、まるで薄暗いカーテンが降りているようだった。
まもるの白い歯が薄赤く染まった。力を入れ過ぎて、口の中を切ったのである。
「うぐ…ぐぐっ……」
畳を2回、ポンポンと叩けば、「まいった」になり、この苦痛から逃れられる。
まもるはもう、奈美のなすがままだった。
ただ耐えることだけが、今のまもるにできることだった。
「まだっ…ま…だ…ッ…!(オレはキャプテンなんだから…こんなので参ったなんかできねェよ…)」
「…キミの気持ち、よ〜くわかるわァ。苦しくてしょうがないけど、意地で参ったできないのよねぇ」
(う……?!)
「キミは女の子を容赦なく絞め落とすほどツオイんだもんねぇ」
(ウゥッ…うぐぐ…)
「ほらほら、どうしたのォ? キャプテ〜〜ン、お〜〜い」
次第に意識が薄れていくまもるを小馬鹿にするようにして、奈美は絞め続けた。
「みんなぁ、これが送り襟絞めよ。一番オーソドックスな絞め技だから、覚えてね」
青息吐息のまもるをさらに絞めあげながら、なんと奈美はまた技の解説を始めた。
「頑張るわネ、キミ」
首にからみついた奈美の腕をかきむしるようにして抵抗するまもるだが、もう指先に力が入っていない。
「でもね〜ぇ、キミが頑張れてるのは根性だけじゃないのヨ。アタシがわざとポイントを
 ずらして、落ちられないようにしてるの。そんなにすぐ楽にしてあげないんだから〓」
女子部員から一層の歓声があがった。
まもるの心臓はドックドックと脈打ち、こめかみの血管は今にも破れそうなほどだった。
眼はとっくに焦点を失っている。
「あぐ…あぐ…ぐぅぅっ……」
「そ〜ねえ、やっぱ、か〜いそうかな?」
そういうと、奈美は手首の角度を少しひねった。
くいッ、という音とともに、しなやかな手首がまもるの頚動脈を圧迫した。
「今、気持ちよぉくしたげる〓」
(き、きも…きもちいぃっ…ひっ……)
それまでの苦痛が嘘のように、まもるは自分が天国に遊んでいるような気分になった。
その瞬間は、オナニーより遥かにまさる快感を、まもるにもたらした。
「うっ…………………ふぅぅっ…………」
断末魔の息とともに、まもるの首がガクンと垂れ下がった。
「これでわかったでしょ?…アタシも手加減してあげてたのヨ」
まもるは完全に落ちて、失神していた。
「みんなぁ、絞め技はタイミングよ。ポイントに入ると、全然力を入れてなくても落ちちゃうのヨ」
だがそんな説明など、まもるの耳に入るはずもなかった…。

(ここ…どこ?…)
朦朧とした意識の中で、まもるは背骨に硬いものが当たるのを感じた。
「ふんッ!」
鮮やかな気合いとともに、まもるは苛酷な現実に引き戻された。
意識が戻った次の一瞬には、奈美の腕が先ほどとは違う形で、首に絡みついていた。
「…ひいっ……」
「みんな、いい?これが裸絞めよ。プロレスでいうスリーパーホールドね」
投げ技のレクチャーと、まったく同じ光景が展開された。
まもるはいろんな形で絞められ、何度も何度も落とされた。
落ちると容赦なく起こされ、また次の技で落とされる。
参ったしないことだけが、まもるの武器になっていった。
(いいっ…きもち…いひぃっ……)
最後に味わう極上の快感と、それに至るまでの地獄の苦痛。
絞め落とされるたびにまもるが畳の上にこぼす、ヨダレや涙や鼻水が、西日に光って
キラキラ輝いた。
最後に、奈美は無抵抗になったまもるの襟首をつかんで強引に立ち上がらせると、
両腕を交差させた。そしてまるで絞首刑のように、上背のないまもるを軽々と吊り上げた。
「これが十字絞めよ。
 この技は、試合ではめったに使わないけどね。強烈だから、覚えてソンはないわ」
「ぐぶぅっ……」
空中に浮き上がったまもるの両足が、バタバタとむなしく空を蹴った。
さらに奈美が両腕にギュッと力を入れると、まもるはポカーンと口を開けたまま、
呆気なく気を失った。
開き切った口元から、ヨダレがダラダラと流れ放題になった。
そのヨダレは奈美の道衣の袖もグショグショに濡らした。
「ふっ、たあいのない」
奈美はそう吐きすてると、意識を失ったまもるを青畳にたたきつけた。
仰向けになったまもるの全身が、上下に脈を打ちながらケイレンする。
「まあ、惨めな姿…こんどは相当、こたえたようね。どう、ボク?」
数十秒もケイレンがおさまらず、さすがに奈美の強さに酔いしれていた女子部員たちも
心配になってきたようだ。
「ねえ、死んじゃったんじゃない?」
「そんな。まさかぁ」
奈美はそんな声にはとりあわず、まもるの胸に両手をあてて、ぐいっと気合いを入れた。
「ふんっ」
「………ううッ!………」
奈美の強烈な活をくらって、まもるはカミナリにうたれたように上半身を起こした。
「歯ごたえがないったらないわ。もう少しはやると思ってたのに」
奈美のキツイ言葉がまもるに突き刺さる。
まもるは眼と口を半開きにしながら、ようやくゼイゼイと呼吸を始める。
(はあ…はあ…)
奈美はまもるの腰の黒帯に手をかけ、引きずりあげた。
「あんたみたいな負け犬が、黒帯しめてるなんて。この部の面汚しだわ」
(はあ…はあ…はあ…はあ…)
「もう練習相手にならないかなあ、ボク?」
(オ…レ…負け…た…の…?ま…け…)
「アタシに一度も勝てないどころか、尻もちひとつつかせられないものね。恥を知りなさい」
奈美はまもるの帯をさっとほどいた。
「キミには、こんなものしめてる資格はないわね。いいえ、男のコともいえないわ」
その嘲りの言葉が、半ば薄れていたまもるの闘志に火をつけた。
(…………うくっ………く………くっそぉぉぉぉぉぉ!)
突然立ち上がったまもるは、気合いとともに奈美にタックルをかました。
そしてその足を両腕でとって、後ろに倒す。
「オレは…オレはまだ…負けてねェッ!」
「あ?!」
思わぬ反撃に、尻餅をつく奈美。
「うそっ!」
みなが思わず叫んだ。それぐらい意表をついた、まもるの必死の反撃だったのだ。
(はあ…はあ…はあ…はあ………)
肩で大きく息をしながら、最後の力を使い果たしたまもるは、倒れた奈美の股間に
顔をうずめる形で倒れこんだ。
(はあ…はあ…これで…これ…で…)
まもるにはもう半ば意識はなかった。
ただ、奈美の繁みの甘酸っぱい匂いを、道衣ごしに感じていた。
尻餅をついたままの奈美。
「ボウヤ、よく頑張ったわね」
奈美はそういって、まもるの頭を撫でた。
彼女の股間は、まもるが噴き出した鼻水とヨダレでぐっしょり濡れていた。
しばらく奈美の股間にキスをしたままだったまもるは、畳についた自分の両ヒザを少し上げ、
奈美から離れようとした。
その瞬間であった。
ぼんやりとしたままの、まもるの視界に、ニヤッと無気味なほどの余裕のある笑いを、
奈美が見せたのは。
「ボウヤ…教えてあげるわ」
そういうと、奈美はからだをまもるの下にすばやく滑り込ませ、その左腕をしぼりあげると、
両足でまもるの上半身をはさみつけたのだ。アッという間の早業だった。
「ぎへえぇっ………」
まもるは、自分の上半身が何かに絞め潰されるような激痛を感じた。
それは、彼が未だに経験したことのない痛みと快感だった。
「いい? 柔道は“一本”とらなきゃ、終わりにならないのよ!」
それまでまもるを小馬鹿にしていた奈美が、マジで怒っている。
女子部員の前で尻餅をつかされたことが、よほど腹にすえかねているらしい。
「どう? これが三角絞め。私の必殺技よ!」
まもるは必死に頭を抜き、がくがく震えるヒザで懸命に立ち上がろうとした。
「バ〜カ、この技は立ちあがると余計に効くのよ!」
「うぐふぅぅげぇっ………」
腕と首を同時にキメられて、まもるは悲痛な叫びをあげた。
(ひゅ〜っ…ひゅ〜っ…ひゅ〜っ…ひゅ〜っ…ひゅ〜っ…)
まもるは限界に近付いていた。ヨダレは垂れ流し放題になり、
溢れ出す鼻水が口の中に流れ込んだ。
あまりの衝撃のために舌が口の中で丸まり、半開きになった口からのぞいていた。
「ホラ、プライドも何もかも捨てて、ひざまずいてマイッタするのよ!」
(イ…ヤ…死ん……で…も…)
まもるは苦し紛れに、空いた右腕で奈美の顔をかきむしった。だがそれは、
奈美に何のダメージも与えることはできなかった。
「フン…オイタがすぎるようね!」
奈美は首を振ってまもるの右腕を払いのけると、両足に満身の力をこめた!
グキィ…ミリッ…
まもるの首と肩が悲鳴を上げた。丸まった舌で呼吸困難になっていたまもるは、
口の端から白いアワをブクブク噴き出した。
視界がかすんで、まもるに見えていたのはもはや奈美のボンヤリとした輪郭だけだった。
全身を襲う激痛からくるケイレンで、手も足も顔も小刻みに震えている。
「ま…まいっ…まいっ…た……」
まもるはついに、消え入りそうな声で敗北を認めた。
まもるの男の意地を、奈美の技と力が木っ端みじんに砕いた瞬間だった。
「やったぁ!コーチ!」
「ヘ〜ん、ざまぁみろ!」
女ってのは残酷なものだ。まもるの健闘(?)をたたえる奴なんかいやしない。
「ひぎえっ…ぐっ…も…もう…や…め…」
まもるはそういって、恥も外聞もなく奈美に哀願した。
「……まいっ…た…オ…レ…負け…たッ…」
しかし、奈美は平然と
「ふ〜ん、あっそう」
と言っただけだった。
「今さら参ったなんて、ムシがよすぎるよっ!」
奈美はそう叫んで、両足にもう一度力をこめた!
「あげっ…ががはぁっ…ぐふぇっ…」
(ジョ………)
それはまさに、トドメの一撃だった。
まもるは、自分の股間が生温かく濡れてきたのを感じた。
(い…いけね……)
薄れていく意識の中で、まもるが最後に思ったのはこれだった。
まもるは苦痛と快感のあまり、失禁したのである。
口から吐き出した、血の混じったアワが、奈美の顔にもブクブクと飛び散る。
まもるは鼻水とヨダレと小便を大開放しながら、完全に白目をむいてしまった。
やがて体全体がカクン、と力を失い、畳の上に吸い付けられるようにして、落ちていった。
「どう? 思い知った?」
ようやく、奈美が三角絞めをはずす。
ビクンッ、ビクッ、ビクッ、ビクッ……
まもるは自分のモノで汚しに汚した道場の青畳に顔をおしつけたまま、
ケイレンの間隔が次第に長くなり、やがてピクリとも動かなくなった……。
「ふんっ!」
奈美は、完全に気を失ったまもるの顔を無造作に踏みつけると、
その素足を前後にゴシゴシと動かした。
口から半分だけのぞいたまもるの舌が、失禁に濡れた畳をなめた。
「キミが汚したんだから、キレイにしなきゃね…それにしても、なんてブザマなかっこう」
だが、まもるは畳にひれふしたまま、まったく動かなかった。
ただ、口元にこびりついたアワとヨダレが、
「ぶく…ぶくっ…ブクッ…」
と、荒い呼吸に応じて揺れているだけだった。
それは、この上ない惨めな敗北であった。

「ふーーっ」
一息いれた奈美は、女子部員たちを見回した。
「みんな、これで気が済んだ?」
彼女たちの、ひときわ大きくなった歓声を抑えるようにして、奈美は続けた。
「これで、あなたたちの憎いキャプテンは、やっつけてあげたわ。
 これに懲りて、もう女子部には手を出さないでしょう」
奈美は、麻理とウィンクを交わした。
「後はテキトーにやっておいてね、でも、一応保健室につれてかないとマズイかも」

どれくらい経ったのだろうか、まもるは保健室のベッドの上で眼を覚ました。
「はっ!」
反射的に上半身を起こしたその瞬間、体中を激痛が走る。
「うっ……ううう〜〜っ…」
「そのまましばらく寝ていなさい」
優しく声をかけたのは、保健の川島先生だ。
「キミがかつぎこまれてきた時はビックリしたわ。
 男の子が女子にかつぎこまれたなんて初めてよ」
(そうか…そう…オレ…負け…)
まもるは、力なくベッドに横になった。
「うう…ううっ…うえええぇっ…うええええんんんっ……」
自分のブザマな敗北を思い出して、まもるはフトンを頭からかぶり、大声で泣いた。

しかしこの時、まもるは自分の性癖を、まだ自覚するには至っていなかったのである。

(続く)


(後記)
最初に書いたように、この小説は私の実体験がベースになってはいますが、細かい部分は
ほとんど創作です。
まず、私は幼稚園から高校1年まで、柔道をやっていましたが、
部のキャプテンではありませんでした。
「歓迎会」は、私の通っていた柔道教室で実際にあったことですが、それは
「入学」ではなくて、「昇段」の歓迎会でした。初段をとると、指導の先生に一度
絞め落とされるのです。私もやられました。
「奈美」さんは、その柔道教室で5年ほど先輩だった女性がモデルになっています。
小学生の時に、男子に混じって地区大会で優勝したり、中学の時には
既に全国レベルの大会にも出場するほどの、実力の持ち主でした。
彼女は道場の中でも一目おかれる存在で、特に寝技が強く、何人もの男子を
絞め落としていました。私も押さえ込まれて手も足も出なかったことがあります。
「三角絞め」の描写は、実際に私が見たことがベースになっています。
それは、男VS女ではなく、女同士の練習試合でしたが、ほとんどここに書いてある
ままの壮絶なありさまでした。負けた方の選手は完全に白目をむいて失神し、
ケイレンしたまま担荷に乗せられて医務室へ直行したのです。さすがに失禁まではして
いなかったようですが。
余談ですが、こういう時、概して勝った女性の方が、負けた選手よりずっと可愛いのです。
この時もそうでした。

今回、一応話としてはこれで終わっているのですが、気が向いたら続きをかこうかなぁ、
とも思っています。
お時間をさいていただいて、ありがとうございました。
(感想等は
Mampepper@aol.com
まで)


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